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ビル管理士の業務内容は?
資格の取得方法や試験内容、合格率を解説
ビル管理士は、ビルのメンテナンスに必要な資格です。業務に活かすためにビル管理士の資格取得を考えているものの、どう取得すれば良いかわからない方もいるでしょう。
この記事では、ビル管理士の業務内容や資格の取得方法を解説します。試験内容や合格基準、合格率なども説明するので、参考にしてください。
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ビル管理士(建築物環境衛生管理技術者)とは
ビル管理士の正式名称は「建築物環境衛生管理技術者」で、建築物の環境衛生上の維持管理を行うために必要とされている国家資格です。
一定規模以上の建築物(特定建築物)を所有する方などは、維持管理が環境衛生上適正に行われるよう監督させるために、建築物環境衛生管理技術者免状を持つ方の中から建築物環境衛生管理技術者を選び、監督させなければならないと法律で定められています(※1)。
監督させる必要がある特定建築物の用途は、以下のとおりです(※2)。
- 興行場(映画館、劇場、音楽会用のホール等)
- 百貨店等
- 集会場
- 図書館・博物館・美術館
- 遊技場(ボーリング、ダンスその他遊技をさせる施設)
- 店舗
- 事務所
- 学校
- 旅館
つまり、オフィスビルなどの一般的な建物も、特定建築物に当てはまります。
特定建築物か否かを具体的に判断する場合に、ご不明な点がございましたら、お近くの保健所へお問合せください。
ビル管理士の仕事内容
ビル管理士は、環境衛生上の維持管理に関する業務を全般的に監督します。主な業務内容は以下のとおりです。(※3)。
- 管理業務計画の立案
- 管理業務の指揮監督
- 建築物環境衛生管理基準に関する測定または検査結果の評価
- 環境衛生上の維持管理に必要な各種調査の実施
ビル管理士は、建築物の維持管理が管理基準に従って行われるよう、必要だと判断した場合は建築物維持管理権原者に意見を述べられます。
また、ビル管理士には環境衛生上の維持管理に関する測定や検査の実施と評価が求められます。結果的に問題があれば、是正措置を行わなければなりません。
※3 出典:厚生労働省「建築物環境衛生管理技術者について」
ビル管理士の資格(免状)を取得する方法
ビル管理士の資格(免状)を取得する方法は、講習会を受けるか試験に合格するかの2択です。それぞれの方法を詳しく解説するので、資格取得の参考にしてください。
講習会を受ける
厚生労働大臣の登録を受けた講習機関が実施する、建築物環境衛生管理技術者講習会の課程を修了すれば、ビル管理士の資格を取得できます。
登録講習機関は公益財団法人日本建築衛生管理教育センターで、公式サイトに講習会の詳細が記載されています。講義科目とそれぞれの講義時間は、以下のとおりです。
1. 建築物衛生行政概論 |
10時間 |
2. 建築物の構造概論 |
8時間 |
3. 建築物の環境衛生 |
13時間 |
4. 空気環境の調整 |
26時間 |
5. 給水及び排水の管理 |
20時間 |
6. 清掃 |
16時間 |
7. ねずみ、昆虫等の防除 |
8時間 |
合計 |
101時間 |
講習会の受講料はテキストなどの教材費を含めて108,800円であり、募集人数は100名です。
講習会は誰でも受けられるわけではなく、学歴や持っている免許の種類、実務経験などで参加条件が決められています。大学の理学や医学などの課程を卒業し、建築物の維持管理に関する業務に1年以上従事していることなどが受講資格の一例です。
講習会に申し込む場合は、公式サイトまたは郵送で受講申込書を入手し、受付期間内に送付する必要があります。
試験に合格する
厚生労働大臣指定の試験機関が実施する建築物環境衛生管理技術者試験に合格すると、ビル管理士の資格を取得できます。
詳細情報は、公益財団法人 日本建築衛生管理教育センターの公式サイトに記載されています。以下で詳しく解説するため、参考にしてみてください。
ビル管理士(建築物環境衛生管理技術者)試験の概要
講習会は平日だけでなく土日も受講しなければならないため、働きながらの受講は現実的ではありません。よって、ビル管理士の資格を取得するなら一般的に試験を受験します。
試験は1年に1度開催され、2024年度の試験(第54回)は10月6日に終了しています。
2025年度に行われる第55回試験の概要は、2025年4月上旬に公益財団法人 日本建築衛生管理教育センターの公式サイトに掲載される予定です。
この記事では、2024年度の試験概要を掲載するので、準備に役立ててください。
試験日程および試験地
ビル管理士の試験は、1年に1回開催されます。2024年度の試験(第54回)は、10月6日(日)に実施されました。
試験地は北海道、宮城県、東京都、愛知県、大阪府、福岡県です。
試験科目
試験科目と配点は以下です。
試験科目 |
配点 |
建築物衛生行政概論 |
20点 |
建築物の環境衛生 |
25点 |
空気環境の調整 |
45点 |
建築物の構造概論 |
15点 |
給水及び排水の管理 |
35点 |
清掃 |
25点 |
ねずみ、昆虫等の防除 |
15点 |
合計 |
180点 |
受験資格および受験手数料
ビル管理士の試験には受験資格があり、誰でも受けられるわけではありません。試験を受けるには、環境衛生上の維持管理に関する実務に、2年以上従事している必要があります。
環境衛生上の維持管理に関する実務とは、以下をさします(※4)。
- 空気調和設備管理
- 給水・給湯設備管理 (貯水槽の維持管理を含む、浄水場の維持管理業務を除く)
- 排水設備管理 (浄化槽の維持管理を含む、下水処理場の維持管理業務を除く)
- ボイラ設備管理
- 電気設備管理 (電気事業の変電、配電等のみの業務を除く)
- 清掃および廃棄物処理
- ねずみ・昆虫等の防除
受験申込方法
願書を含む受験の手引きは、公益財団法人 日本建築衛生管理教育センターの公式サイトからダウンロードして印刷するか、郵送で請求します。
受験の手引きの配布期間および申込期間は、2024年は5月7日〜6月17日でした。受験票の発送日は2024年9月11日であり、試験日の約1ヶ月前に届きます。
ビル管理士試験の合格率と合格基準
2024年10月6日実施の第54回試験は、受験者数7,593人に対し合格者数が1,759人、合格率は23.2%でした。過去3年間の試験結果を見ると、合格率は10%台後半から20%台前半で推移しているため、決して高いとはいえません。
科目ごとの得点が各科目の満点数の40%以上であり、かつ全科目の得点が全科目の満点数の65%以上が合格基準です。第54回試験の合格基準は以下のとおりです。
試験科目 |
配点 |
合格基準点(合格基準) |
建築物衛生行政概論 |
20点 |
8点以上(40%以上) |
建築物の環境衛生 |
25点 |
10点以上(40%以上) |
空気環境の調整 |
45点 |
18点以上(40%以上) |
建築物の構造概論 |
15点 |
6点以上(40%以上) |
給水および排水の管理 |
35点 |
14点以上(40%以上) |
清掃 |
25点 |
10点以上(40%以上) |
ねずみ、昆虫等の防除 |
15点 |
6点以上(40%以上) |
合計 |
180点 |
117点以上(65%以上) |
つまり、合計点が117点以上(65%以上)でも、ある科目で40%未満だった場合は合格できません。年1回の受験機会を逃さずに合格できるよう、学習に取り組む必要があります。
ビルメンテナンスするなら取得しておきたい関連資格
ビルメンテナンスに関わる仕事に携わるなら、ビル管理士以外にも取得したほうが良い資格がいくつかあります。
それぞれの概要を確認し、どの資格を取得すべきかを判断してください。
第二種電気工事士
ビルや工場、住宅などの建築物では、資格がなければ電気工事を行ってはならないと決められています。電気工事士の資格を取得していれば、600V以下で受電する設備の工事に従事できます。
資格は第一種と第二種の2種類あり、第一種のほうが第二種より取得難易度が高いものの、より幅広い業務に従事できます。
電気関連の作業には必須の資格であり、ビルメンテナンス業務に従事するなら持っておきたい資格です。
危険物取扱者乙種第4類
一定数量以上の危険物を貯蔵したり取り扱ったりする施設では、危険物取扱者を置かなければなりません。
危険物取扱者乙種第4類の資格があれば、灯油やガソリン、軽油、重油などの引火性液体を取り扱う業務に従事できます。
受験資格に学歴や特定の業務従事実績などの制限はないので、誰でも受験が可能です。資格取得後は、定期的に「危険物取扱者保安講習」を受講しなければなりません。
二級ボイラー技士
ボイラーは、ボイラー技士の資格を持った方でなければ取り扱えません。二級ボイラー技士の資格を持っていれば、工場や発電所、オフィスビルなど幅広い施設で働けます。
ボイラー技士は特級、一級、二級の3種類ありますが、最も基本的な二級ボイラー技士を取得すると、全てのボイラーを扱えます。
なお、二級ボイラー技士の資格試験を受けるためには、6ヶ月以上のボイラー運転経験が必要です。実務経験がない場合、ボイラー取扱技能講習を受講して修了証を受け取れば、資格試験の受験が可能です。
第三種冷凍機械責任者
冷凍機械責任者は、高圧ガス製造保安責任者と呼ばれる国家資格のうちのひとつです。
冷凍や冷蔵の設備に限らず、空調設備も冷凍機械に該当するので、資格を持っていれば建物の保守点検や無資格者の監督など、幅広い業務に携わることが可能です。
なお、資格は以下の2つの方法のいずれかで取得できます。
- 国家試験を受験して合格する
- 高圧ガス製造保安責任者講習を受講して修了
消防設備士
消防設備士の資格を持っていれば、屋内消火栓設備やスプリンクラー設備、自動火災報知設備など、法律で設置が義務付けられている建物の工事や整備の実施が可能です。
消防設備士の資格試験は、一般財団法人 消防試験研究センターが取り扱っています。資格を取得した後も、新しい技能や知識を身につけるために決められた期間ごとに講習を受けなければなりません。
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ビル管理士の資格は、オフィスビルなどの設備管理を適切かつ効率的に行うために欠かせない資格です。資格は講習会や試験で取得できますが、難易度は高いためきちんと準備しなければなりません。
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監修者情報
隈本 稔(くまもと みのる)
経営・キャリアコンサルタント
長崎大学大学院生産科学研究科を修了後、大日本印刷株式会社および東レ株式会社にて、製品開発・生産技術職に従事。2018年以降、長崎を拠点に経営・キャリアコンサルタントとして、企業の人材戦略、採用定着・チームビルディング、製造業の工程安定化、集客サポートなど、経営から人材活用に関するコンサルタントを行っている。
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